懇談で通知表を渡されたが、評定が思ったより良くなかったという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
- 子どもから定期テストの点数は上がったと聞いていて、懇談を楽しみにしていたのに評定が悪かった。
- 先生には聞いてみたものの納得がいかない。
- テストの点数は良かったのに、なぜ評定が悪いのだろう。
- では、どうすれば評定を上げることができるのだろうか。
- テストの点数は取れないが、少しでも評定を上げるためにはどうすればいいのだろうか。
元公立中学校教員が評定(成績)の付け方の真実と、評定を上げる秘訣を教えます。
評定
成績とは評定のことで、中学校では各教科5段階で評価します。
2002年から相対評価に代わって絶対評価に変わりました。
相対評価では、各教科で「5」を付ける割合が決まっていたので、いくらテストの点数が良くても、さらに上がいれば「5」は付かなかったのです。
絶対評価は、到達度評価とも呼ばれ、「5」を付ける割合が決まっていません。
なので相対評価に比べて、よい良い評定を取りやすくなりました。
極論、頑張れば全員「5」になりますが、評定平均(後述)という制限があるのです。
観点別評価の導入
絶対評価と同時に観点別評価が導入されました。
以前は、テストや提出物などを総合した結果、評定は「3」と決めていました。
もちろん、配点や重み付けは各教員なりに考えていますが、基準がまちまちでした。
観点別評価は、従来「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の4観点から判断していました。
中学校では、2021年から「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に変更されました。
説明責任が求められるようになり、事前に示した3観点(4観点)で評価し、万が一クレームがあった場合はきとんと説明することが求められます。
突然の文科省の決定(4観点当時)により、定期テストも「知識・理解」を問う問題、「技能」を問う問題、「思考・判断・表現」を問う問題を分けて作成しなければならなくなり、現場は右往左往して、負担が大きくなったことを記憶しています。
チャレンジテストを利用した評定平均
大阪市では、市内の全中学校を対象としたチャレンジテストを利用して、学校間の格差を縮めようとしています。
絶対評価といっても、学校によって定期テストも実力テストも違う問題が使われます。
テストが簡単であれば、単純に評定は上がります。
学力が低い学校ほどテストが簡単な傾向があります。
そこでまず、共通の問題であるチャレンジテストの結果を参考にして、学校別の評定平均が決めます。
X中学校の評定平均が、3.38±0.3と決まれば、教員は付けた評定の平均が、3.38±0.3の間に収まるように調整します。
なので頑張れば全員が「5」というのは実質ありえないのです。
とはいえ相対評価に比べて、より高い評定を取りやすくなりました。
さらに学力が高い学校に在学した方が、チャレンジテストの恩恵を大きく受けることになります。
大阪市統一テスト
テストは5教科(国語・数学・社会・理科・英語)で実施され、その結果は生徒ひとりひとりの評定(内申書)に活用。テストで、全市の得点分布のうち上位6%に入る生徒には、該当する教科で必ず評定「5」が与えられる。上位18%に入る生徒には評定「4」、上位39%に入る生徒には評定「3」が与えられる。
上記のように決まっており、3観点で評価した結果、「4」が付いたとしても、統一テストで上位6%に入れば、評定は「5」に変更されるのです。
なんだか4観点で判断しなさいとか、上位6%に入ったから授業態度が悪くても「5」にしなさいとか、振り回されている感が否めないです。
4観点から3観点(2021年度から)
2021年度から観点別評価が変更されました。
4観点から3観点になりました。
気にすることはありませんが、それぞれの観点が何を評価しているのかを理解しておく必要があります。
指導と評価の年間計画
テストの点数は「知識・技能」、夏休みの宿題は「主体的に学習に取り組む態度」など、それぞれの観点は何をどのように評価しているのかは、学年始めに配布される「指導と評価の年間計画」に書かれているのでチェックしてください。
観点別評価は、学校や教科によってそれぞれの重み付けが違います。
例えば、「知識・技能」:「思考・判断・表現」:「主体的に学習に取り組む態度」=2:1:2。
これも「指導と評価の年間計画」に載っているので、要チェックです!
実際の評定の付け方
4観点時代の某中学校での社会科を例に説明します。
「知識・理解」 | 定期テスト・実力テスト |
「技能」 | 春休みの宿題・定期テストと実力テストの技能点・ノートの技能点 |
「思考・判断・表現」 | 定期テストと実力テストの思考点・調べ学習 |
「関心・意欲・態度」 | ノート・プリントなどの提出物・発表・忘れ物 |
重み付けは、「知識・理解」:「技能」:「思考・判断・表現」:「関心・意欲・態度」=2:1:1:1でした。
ある学校では、生徒が頑張ってくれたおかげで評定平均が4を超え、多くの生徒に「5」が付いたことを覚えています。
テストの点数が悪かったのに「3」が付いた例
「知識・理解」:「技能」:「思考・判断・表現」:「関心・意欲・態度」
「B B B B」だった場合、評定は「3」か「4」が付きます。
「B」といえど、「B」の上位と下位があるからです。
「B」でも、すべて下位の「B」なら「3」になります。
「B B B C」で「3」が付く場合は、知識・理解は「B」ですが、しっかり点数が取れた「B」の上位の生徒でした。
私の場合、最低限、板書を書き写して、宿題をしていれば「関心・意欲・態度」は「B」です。
プラスアルファで、調べ学習や感想を書いてくれた生徒には「A」を付けます。
一度、調べ学習をすると、ほぼ毎回やってきてくれます。
「B B B A」だった場合、評定は「3」か「4」で、「B B B B」でも「4」が付く場合があります。
もちろん、それぞれの観点での上位と下位があるので一概には断言できません。
テストの点数を取るより、確実に「意欲・関心・態度」であるノート点を狙いに行った方が確実です。
「提出物は救いだ」といわれる所以です。
「C C B A」とテストの点数が悪くて、「思考・判断・表現」で「B」、「関心・意欲・態度」で「A」を取り、評定が「3」だった生徒もいました。
テストの点数が悪くて、「知識・理解」で「C」だとしても、「関心・意欲・態度」で「A」を取り、評定「3」を取ることもできるのです。
つまり、ノートは重要であり、新しい3観点である「主体的に学習に取り組む態度」でも、提出物であるノートの評価が大きいのです。
三学期の成績の付け方
三学期は基本的に一・二学期の合計です。
「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の三学期の合計で評価します。
テストを受けられなかった時は
せっかく頑張って勉強したのに、体調不良などでテストを受けられない場合がありますよね。
そのような場合、前後のテストから推測して仮の点数が付けられます。
例えば、中間テスト80点(平均60点)で期末テスト(平均50点)を欠席した場合、80:60=X:50という計算式で、67点となります。
不登校などは、さらに80%の54点になる場合があります。
基本的には100%で仮の点数を入力しますよ。
評定を上げる方法
とはいえ、やはり少しでも評定を高くしたいですよね。
統一テスト
王道はテストの点数です。
観点別評価の重み付けでも「知識・技能」の比重は大きいです。
例え授業態度が悪くても、提出物を出していなくても、統一テストで上位6%に入れば「5」は確定です。
教員のなかでも、この制度はおかしいという声はありますが、制度上仕方ないです。
「主体的に学習に取り組む態度」
ではテストで点数は取れないが、評定を上げたい場合はどうすればいいでしょうか。
新しい3観点の「主体的に学習に取り組む態度」に力を入れましょう!
具体的な評価方法としては、ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察や、児童生徒による自己評価や相互評価等の状況を教師が評価を行う際に考慮する材料のーつとして用いることなどが考えられます。その際、各教科等の特質に応じて、児童生徒の発達の段階や一人一人の個性を十分に考慮しながら、「知識・ 技能」や「思考・ 判断 ・ 表現」の観点の状況を踏まえた上で、評価を行う必要があります。
国立教育政策研究所の「学習評価の在り方ハンドブック」
一応、指針は出ていますが、「主体的に学習に取り組む態度」を何で判断するかは現場の教員に任せられています。
学校から配布される「指導と評価の年間計画」を熟読してください。
4観点だった頃の「関心・意欲・態度」です。
実際に社会科でも、「関心・意欲・態度」によって救われた生徒を数多く見てきました。
じゃあ具体的に何をどうすればいいかを教えます。
ずばりノートです!
私は、ノートを4観点の「技能」「関心・意欲・態度」で評価しました。
まずは授業で最低限の板書を書き写してください。
ノートの端に5センチほどのメモ欄を作らせて、気になったことをメモしましょう。
例えば、歴史の年号のゴロ合わせや余談で話した雑学などです。
メモが多いノートは評価を高くしました。
また、毎回の宿題に、授業のまとめや調べ学習を出しました。
ノート見開きの左ページには板書を書き写す。
右ページには、その日の授業を自分なりにまとめ、気になったことを調べて来させました。
最初からうまくまとめることはできません。
歴代のまとめや調べ学習が上手だった生徒のノートのコピーを配って参考にさせました。
評価の高いノート作成のコツは2点
コピーして貼り付けることも認めました。
年表や三権分立の図を書き写すだけでも見栄えが良くなります。
調べ学習といっても、最近はネットを調べれば何でも出てきます。
授業では取り上げることができなかった諸説や雑学、トリビアなんかは社会科に多くあります。
授業中に触れる時間がないので、調べるキーワードを出しておくこともあります。
そんな風に調べて、色ペンを使ってノートをまとめていると、生徒は勉強した気になってきます。
そうなれば、しめたものです。
私は、いかに社会科に興味・関心を持ってもらうかに注力していました。
他の教員より頑張って教材研究をしていた自負があるだけに、メモやまとめに授業の感想を書いてくれたりすると、とても嬉しかったです。
勉強の仕方や相談をメモに書いてくれる生徒もいました。
交換日記のようにノート上でやりとりしたり、教科通信でまとめて質問に答えたりもしました。
知らず知らずのうちにテストの点数に結びついてきた生徒もいました。
とにかく評定を上げるためにノートを頑張って損はありません。
まとめ
中学校の評定は、3観点から評価しています。
それぞれの観点で何をどのように評価しているかは、学校や教科によって違うので、配布される「指導と評価の年間計画」に目を通してください。
もちろんテストの点数が取れたことに越したことはありません。
テストの点数以外で評定を上げる秘訣は、ノートです!
ノートがある教科しか参考になりませんが、新しい3観点のすべての観点でノート点が採用される可能性があります。
実際、私は4観点時代にノートの技能点を採用していました。
少なくても「主体的に学習に取り組む態度」には入るでしょう。
積極的に挙手して発表することもいいですが、苦手な生徒もいます。
ノートであれば、自宅で時間をかけて作り上げることが可能です。
授業中には発表できなかったことや意見・感想を書いてみても教員は嬉しいです。
まずは最低限の板書を書き写す。
できれば雑学などをメモする。
余白や新しいページに、自分なりにまとめや調べ学習をする。
最初は、教科書や資料集の絵や図を書き写すだけで十分です。
できれば色ペンなどを使って見やすくするとなお良いです。
ネットを最大限に利用しましょう。
ネットで調べたことを書き写したり、可能であればプリントアウトしてノートに貼り付けましょう。
だんだん楽しくなれば儲けもの。
ノートチェックは大変ですが、授業のまとめや調べ学習、授業の感想など工夫されたノートを見ると、やりがいを感じる教員が多くいるのは事実です。
冬休みが近づいてきましたね。
1年生なら地理が終わり、2年生なら明治時代まで学習したでしょうか。
コロナの新規感染者数も落ち着き、久しぶりに帰省や家族旅行を楽しめるかもしれません。
- 気候は自分が住んでいるところと違いますか。
- 名産品は何ですか。
- 歴史的な名所がありますか。
二学期に学習して、もっと知りたいと思ったことをネットで調べてみましょう。
冬休みの宿題を提出する時、ノートやプリントに、授業の感想や冬休みに体験したことを一言書いてみましょう!
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